TLHヘリスキー 2006 体験記
2005年秋、大阪、名古屋、東京で行った「カナダ・バックカントリー・スキー&スノーボードの夕べ」、参加者の中から抽選で5日間のヘリスキー旅行にご招待という幸運を射止めた滝沢充弘さん。以下は滝沢さんによるTLHヘリスキー体験記です。
Tour Date: 2006年2月19~24日
2006年2月末、TLH HLISKIING社のツアーに参加して、カナダでヘリスキー三昧の5日間を過ごしてきた。日本のヘリスキーのように1回いくらという料金体系ではなく、最低保証垂直距離(私の場合垂直距離72700フィート(約22km))までは何回でも飛べるという仕組みだ。標高2700m前後のピーク付近の広々としたバーンを一気に滑り降りたり、木を縫うようにディープパウダーを滑っていくのはとても気持ちいい。滑り降りると、ヘリがやってきてまた次のバーンへ連れて行ってくれるのだ。スキーやスノーボードでバックカントリーをたくさん滑って、おなかいっぱいにしたいという人にはうってつけのツアーだ。
ヘリスキーの1日
まず、ヘリスキーツアーがどのように運営されているか、平均的な1日を紹介したい。
ベースになるホテルはバンクーバーの約200 km 北方にあるTyax Mountain Lake Resortだ。きれいな湖畔(といっても凍っていて、雪に覆われている)にあるリゾートホテルだ。 朝は6:30にストレッチのクラスがある。あんまり参加者はいなかったけど、スキーの前に身体をほぐすのは良いことだ。しっかり30分ほどストレッチしてから食堂へ向う(7:00)。
食堂の脇には掲示板があり、本日のグループ割りと、出発時間を確認する(10人で1グループ+ガイドという構成で、グループ毎に行動する)。食事はビュッフェスタイル。朝食は日替わりのスープ、盛りだくさんの果物、ヨーグルト、焼きたてパン、サラダ、ポテト、卵料理などなど。毎日とてもおいしかった。
ヘリのスタートはその日の気象状況、雪の状態などで変わるが、だいたい9時ごろだ。身支度を整えて、アバランチビーコンをセットして指定された時間にホテル前に集合する。ガイドが点呼とビーコンの動作チェックを行ってからホテルの横のヘリポートへ移動。ホテルからヘリで飛び立って、一気に標高2700m前後の高山へ向う。
滑るときはガイドが先頭で滑り、次に一般参加者、最後にバックパック(無線や救急キットなどが入っている)を持った参加者が滑るという順番だ。まず、ガイドは露出している岩や雪穴などのハザードがないか、雪質は固くないかなどをチェックしながら滑る。次に参加者はガイドから指示された範囲で自由に滑り降りるというシステムだ。
午前中に5 - 6本くらい滑る。1本は短いときで標高差500m、長いと1000m以上滑る。昼はクイックランチ(サンドイッチや温かいスープ、ココア、スナックなど)をスキーエリアでとり、午後も数本滑ってからヘリでホテルに帰還する。季節によって変わるようだが私が行った2月末は3時には帰り支度をはじめ、4時ごろホテルに帰った。
ホテルでシャワーを浴び、5時ごろからバーでくつろぐ。軽く飲んで、今日のスキーやバーン状態について話していると夕食になる。6:30ごろ夕食の支度ができる。夕食もビュッフェ形式。日替わりのスープ、魚料理、肉料理がおいしい。野菜もたっぷり取れる。 夕食後は、バーで飲みながらダーツをやったり、遊戯室で卓球やサッカーゲームなどをした。部屋に帰ってTV(ちょうど開催されていたトリノオリンピックなど)を見て、12時には就寝した。
次に、実際に私が行ったときどんな感じだったのかを初日から順に報告する。
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スキーリゾートの日々
初日は移動日だ。バンクーバーの指定されたホテル前のバスに乗り込んだ。このツアーに参加するには前日までにバンクーバーかウイスラーに入る必要がある。バスは途中ウイスラーでも参加者をピックアップし、ベース拠点となるホテルに移動する。6-7時間の長旅だ。バスには簡単なサンドイッチと水が積まれていた。サンドイッチがおいしかったので、ホテルの食事に期待が持てた。
私は一人で参加だ(あとでわかったことだが、欧米の人もけっこう一人での参加者が多かった)。ホテルに着いて荷解きが終わると、オリエンテーションだ。オリエンテーションでは日々の生活の説明、ヘリの保険、権利放棄などについて説明を受け、保険加入(任意)、権利放棄の署名(必須)などをする。事前にパンフレット(英語)を見ていたのと、代理店のJAPANADA Enterprises Inc.社から日本語の資料をもらっていたので説明はだいたい理解できた。その後、レンタルするスキー板を決めて、スキー靴を預けてセットしてもらう。体重は自己申告制ではなく、実際に体重計にのって計測したのは過少申告する人が多いせいだろうか?
初日の夕飯は知り合いが全くいない。どの席に着こうか迷っていると、スタッフの女性が声をかけてくれた。スタッフ&ガイドチームのテーブルに混ぜてもらった。かつて日本で参加したカナダのアバランチ講習会の話しをしたら、講師のエンライトはガイドの知り合いだったようで話がはずんだ。 今回のツアーでは日本人の参加者は私だけだった。
2日目の朝は早い。ビーコン、プローブの練習を行うために早めに朝食を済ませた。裏庭でビーコン、プローブの操作方法の説明の後、2人一組でビーコン操作の練習をした。その後、ヘリポートへ移動し、ヘリの乗り降りの手順、注意等のレクチャーがあった。ようやくヘリに乗り込みシートベルトを締める。いよいよ出発だ。
ヘリは一気に高度を上げて目的地に向けて飛んでいく。眼下には川や湖が見える。30分ほどで標高2500mのピーク付近に着陸。習ったとおりにすばやく降りる。ガイドがスキー板を降ろして合図するとヘリは急いで舞いあがっていく。てきぱきしていて、 F 1のピット作業のようだ。この日のメンバーはボーダーが3人。スキーヤーが7人だ。
ガイドから基本的な注意(ガイドより先を滑らない等)を受けていよいよ滑走開始だ。雪は少ないがまあまあ良さそう。シュプールのないバーンにトラバースして滑る。私はその前の週に膝をいためていたので少し不安だったが、最初の1本をなんとか無難にこなしたのでだいぶ落ち着いた。
ヘリスキーのエリアはゲレンデで滑るのとは違い、自然のバーンだ。圧雪されていないバーンに慣れていない人には辛い。ニュージーランドからきたクリスが遅れがちだ。最も早くかっとんで行くのがオーストリア人のオズワルト(53歳)だ。私も思ったより膝の状態が良いのでパウダーを攻めてみた。ラインはガイドとオズワルトのを外すので、目の前はノートラックで気持ちよい。
毎回クリスを待つので、オズワルトはおかんむりだ。私は初日から飛ばすと膝が心配なのでむしろほっとしていた。午前中最後はツリーラン(TREE RUN=林間滑走)だ。スノーボーダーの若者のリクエストだ。彼は何度か来たことがあるらしい。急斜面を滑走するのでクリスは1回お休み。
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足並みが揃うとガイドもいちいち止まってはくれない。林の中では見通しが悪いので、先に行ったガイドはヨーデルのような裏声の節をつけて「We are here」などと呼んでくれるので、そちらを目指して滑る。標高差1000m以上あったけど、あまり休まずに滑り降りた。木の間は狭いけど、雪は深いパウダーで楽しい。「きゃっほー」思わず歓声があがるのは日本人だけではないようだ。みんな思い思いの声を上げて滑走した。オズワルトは親指を立てて喜んでいる。私にとってもカナダまで来た甲斐のある1本だった。ヘリが止っているところまで滑ると、昼食となった。グループの大多数は最後の1本が気に入って、興奮気味。スキーが共通言語だから、言っていることはおのずとわかるのがおかしい。
おいしいスープを堪能して、午後最初の1本は当然もう一度ツリーランとなる。今回はクリスの他にアメリカ人のローラも待機組みに入る。彼女は深雪が苦手らしい。残りの8人はさっきのルートの下部500mだけ(林間部分)を滑る。ローラの旦那のクリストファー(彼もクリスだがニュージーランド人とは別人)はローラを気づかって心配げだが、いざ、滑るとなると元気いっぱいだった。
滑りたくない(滑れない)ところは、本人の意向やガイドの判断でヘリに居残ることでパスできる仕組みなので、疲れたらお休みができる。ガイドは他のグループのガイドと雪の状態などの情報を無線で連絡しあい、最も良さそうなところへ参加者を案内してくれる。参加者はガイドに良さそうな斜面を指差して、あの斜面は滑れるのか、面白そうだけどどうなのかなどしきりに聞いてい る。参加者の希望とガイドの思惑が一致するとヘリはすぐに次のバーンには運んでくれる。実に贅沢でダイナミックな遊びだ。しかも、1本の滑走距離が長い。
二日目の夕食はオズワルトとクリストファー、ローラと一緒に食べた。スキーの話題で盛り上がった。オズワルトは日本のスキー用語にドイツ語が使われていることを知るととても喜んでいた。ローラにプルーク ボーゲンとはどういういわれか熱く語っていた。
3日目は寒い1日だった。朝、掲示板を見るとDownと書いてある。今日はお休みかなと思っていたら、10時ごろ行けそうということになり、急遽出発することになった。
山頂はウインドクラストしていて、カリカリのバーン。ローラはおびえて満足に滑れない。1本滑るともう今日は滑らないと言い出す。ガイドがもう少しよいバーンに行くということで、もう1本滑る。今度は上部だけカリカリで、それ以降はモナカになっていた。モナカ雪は表面が固くて中がもさっとした雪の状態をいう。私はハの字にして外足で表面の固い部分を粉砕し、内足は返しやすい固い部分で戻す(プルークターンの要領)で滑ってみたら意外にうまく滑れたので面白かった(ジャンプターンは膝が悪くてできなかった)。しかし、ローラはかなり滑れなかったようで、次は休む宣言を出す。旦那のクリストファーもヘリに残留となる。
ヘリはグループ単位で借りている。他のメンバーが滑れば、休んでいても自分の垂直距離も減る仕組みだ。自分の契約した最低保証距離を滑りきると次からは課金されるから、雪面の状態がよくないときは滑りたくない気持ちが働く。グループ全員がやめるのに同意すれば、そこでその日はそこで打ち切りになる。
ガイドは次はもう少しよいところへ案内するということなので、もう一本滑るが状況はよくならなかった。われわれのグループは、午前中で打ち切りとなった。英語力があれば、ツリーランを提案したかったが、体勢は既に決していた。今回に限らず、英語が不得意なばっかりに次にどこに行きたいとか、そういう議論に参加できないのは歯痒かった。
午後はホテルの周囲を散策して過ごした。ちなみに、他のグループは夕方まで滑っていた。標高を落としてツリーランをしたらしい。午後気温が上がると雪の状況はよくなったらしい。ちょっと残念な気がしたがしかたがない。 この日の夕食からスイス人のグループと仲良くなった。翌日から同じグループになるメンバーだ。オズワルトと同じドイツ語圏の人たちだ。バーでビールやワインを飲んで盛り上がった。
ホテルのバーの雰囲気は、蓮華温泉の玄関前や食堂に似ている(見た目ではない)。蓮華温泉の春はスキーヤーしかいない(道が雪で閉ざされ車が入れない)から雰囲気が似るのだろう。今日滑ってきたルートや自分がかつて滑ったルートについてみんなが興奮気味にしゃべっているところが万国共通なのかもしれない。もっとも、この日のホテルでの話題はカナダの雪も自国(日本やヨーロッパ)とそんなに変わらない。よくないときもあるんだということがメインの話題だったけど。
4日目もさほどよい状態ではなかった。バックカントリーではありがちだが、雪の状態がよかったりわるかったりまちまちだった。グループが変更となり、全員スキーヤーとなった。私とオズワルト以外はスイス人でそろいもそろってスキーがうまかった。足並みがそろうと、ガイドもそれなりのルートを取ってくれるので楽しい。
5日目は最高のスキー日よりだった。朝から快晴。雪質も抜群だった。雪は良く、特に午後になって雪が緩んできたとき、すばらしいパウダーに出会えた。オズワルトは「OH!OH!」って絶叫していた。
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ヘリスキーについて
さて、スキー初日に一緒だったニュージーランド人のクリスは、その後別のグループで楽しそうに滑っていた。スタッフがグループの組み合わせを変更して、ゆっくり滑れるグループに入ったからだと思う。クリスのようにゆっくりスキーを楽しむ50代、60歳以上の人たちもいた。奥さん子供をつれて来ている人も見かけた。しかし、ツアーの中心層は、滑りを重視で来ている人たちだった。特徴はみんなスキーがすごく上手なこと。若い人や女性もいたが、50歳代前半の男性が多かった。お金があって自由がきく年代なのだろうか? ツアー会社は最低垂直距離を売り物にしているから、パウダーを思う存分に滑ることを期待して参加している人がほとんどだった。
がんがん滑りたい人も、ゆっくりリゾート派の人もそれぞれ、楽しんでいたと思う。私の場合は、たくさんのバーンを滑ったので、山の形からあのあたりを滑ったら面白そうという見当がつけられるようになったことが一番嬉しかった。日本に帰ってホームゲレンデの高畑スキー場(福島県南会津)に出かけた。高畑スキー場から尾瀬の方を眺めると、窓明山から三岩岳の稜線がすばらしい。いつも見ていた稜線だけど、今までスキーで滑る対象としては見ていなかった。カナダではああいうところを滑ったんだなと懐かしく感じた。いつかすべりに行こうと思う。
TLHのヘリスキーツアーは3500平方kmという広大なエリアのなかから、その日一番良さそうなバーンをすべりに行く。滑りたいところに素早く移動して滑りたいところを滑る。素晴らしい景色の中、参加者は純粋に滑って見たいところを指差して、あそこは滑れるのかとガイドに聞いてみる。滑れるバーンは、ガイドにとっては名前の付いたコース(メキシコシティなど)なので、行けるかどうか楽しいラインかどうか直ぐに返事が帰ってくる。広大な山脈のなかで好きなところ、好きなバーンの良いところだけ滑ることができるのはヘリスキーならではだろう。しかも1日に何本も滑れる。次から次によいバーンに当たると、1本1本の感動が薄れてくるのは贅沢な悩みというものだろう。
私は今まで何回かバックカントリースキーに出かけたことがある。ゆっくり、雪を踏みしめてハイクアップするのは楽しい。樹林帯では植生を見たり、鳥のさえずりを聴きながら額に汗して登っていると、自然に触れている気がする。標高差500mでもへろへろに疲れるけど爽快だ。人に頼らず自分でルートを決めるのも楽しい。せっかく登った一本だから、もったいないのでゆっくり丁寧に滑る。こういうスタイルはとても気に入っているしこれからも大事にしようと思う。ただし、誰にでも勧められるものではない。
カナダのヘリスキーはまったく反対だ。スピードが早いので、ゆっくり自然を楽しめるわけではない。また、自分の判断で好きなところへ行けるわけでもない。しかし、ヘリを使うことで、一日に何倍も滑ることができるし、ガイドが案内してくれるから(まったく安全なわけではないが)、スキーやスノーボードができればだれでもバックカントリーを楽しむことが可能だ。かっとび系の人もゆっくり派の人もバックカントリー経験者も未経験者も楽しめる。費用はかかるけど、誰にも勧められるのがヘリスキーのよいところではないかと思った。ヘリスキーのスタイルも楽しかったし、また行ってみたいと思う。

TLHへリスキーの詳細情報はこちらをご覧ください。
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